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死霊の町 *
The City of the Dead **
    1960年、イギリス 
 監督   ジョン・リュウェリン・モクシー 
撮影   デスモンド・ディキンスン 
編集   ジョン・ポムロイ 
 美術   ジョン・ブレザード 
    約1時間18分 *** 
画面比:横×縦    1.66:1
    モノクロ 

DVD
* 手もとのソフトの邦題は『死霊の町 シティ・オブ・ザ・デッド』。他に『ホラー・ホテル 死霊の町』のソフトもあるとのこと
** 手もとのソフトでは Horror Hotel。[ IMDb ]によるとこれはUSA、フランスその他で用いられたという。
*** 手もとのソフトでは約1時間15分
………………………

 超自然現象は起きるものの、この作品を古城映画という呼ぶことはさすがにできません。ただ隠し地下通路が出てきますし、舞台の町はほぼ夜の場面だけで終始霧が這っています。面白いイメージも見受けられ、クリストファー・リーも出演していますので、手短かにとりあげることといたしましょう。なおネタバレがあります。


 本作の原案者であるミルトン・サボツキーは、マックス・J・ローゼンバーグとともに製作も担当しており、この二人は後にアミカス・プロダクションを設立、『テラー博士の恐怖』(1965、監督:フレディ・フランシス)を始めとするオムニバス怪奇映画でハマー・フィルムの後を追うことになります。本作の時点では製作会社はヴァルカン。
 また本作は同年のヒチコックの『サイコ』といくつかの共通点を有していますが、しばしば念押しされるように本作の撮影は1959年10月12日に開始、『サイコ』は1959年11月30日とあって、一致は偶然なのでした(下掲
English Gothic. A Century of Horror Cinema, 2002, p.69, The Christopher Lee Filmography, 2004, pp.96-97)。ちなみに[ IMDb ]によると『サイコ』は6月16日にUSA公開、本作は同年9月にUK公開されたとのことです。
 なお撮影のデスモンド・ディキンスン(ディキンソン)には『ハムレット』(1948)ですでに出会いました。[ allcinema ]を見ると、マイケル・ガフ主演の『黒死館の恐怖』(1959、監督:アーサー・クラブトゥリー)など、ジャンル映画をぼちぼち手がけています。

 冒頭は1692年3月3日、ニューイングランドのホワイトウッドで魔女とされたエリザベス・セルウィン(パトリシア・ジェセル)が火あぶりに処せられる場面から始まります。この場面で本篇中唯一昼間のホワイトウッドが描かれるのですが、きちんと霧に浸されています。
 なお冒頭に魔女の処刑を持ってくるのは、同年の『血ぬられた墓標』と共通しています。冒頭ではありませんが『女ヴァンパイア カーミラ』(1964)も相似た設定を示し、また魔女ではありませんが、『怪談呪いの霊魂』(1963)や『惨殺の古城』(1965)では冒頭で邪悪な者が処刑されます。物語中の現在に対する遠い過去からの呪いというこうした設定は、1930~40年代の作品ではあまり見かけなかったような気もするのですが、充分な例をおさえているわけではないので後日の課題としておきましょう(『ミイラ再生』(1932、監督:カール・フロイント)を始めとするミイラものが類例となるのかもしれません)。

 群衆の「魔女を燃やせ!」の叫びがそのままクリストファー・リー演じるアラン・ドリスコルによって引き継がれます。歴史のゼミでした。ドリスコルはエクセントリックな気味はあるものの、いい先生のように見えます。歴史的な感覚も備えている。
 対照的にちゃちゃを入れた学生ビル・メイトランド(エンド・クレジットではトムになっています、トム・ネイラー)は、ガールフレンドのナン(ヴェネティア・スティーヴンスン)も諭すように、最低としかいえません。その後の場面も合わせて、なぜこんなのとつきあってるんだろうと思わざるをえない。
 ドリスコルはナンのレポートを誉めます。ナンはもっと調査したいと喰いつく。この時点でドリスコルが誘導したりしているようには描かれておらず、魔女狩りの起こった町に行きたいと言いだしたのはあくまでナンの方です。ともあれドリスコルはホワイトウッドの町とそこの宿屋レイヴン・ホテルを紹介する。ホテルの経営者は知りあいのニュウレスとのことです。
 ナンの兄で科学者のディック・バーロウ(デニス・ロティス)も入ってきます。彼の態度もあるまじきものです。

 約12分、ナンの運転する車が夜の道を走ります。霧だらけです。ガソリン・スタンドで道を訊く。ワンポート・ロードは誰も使わない道だという。
 ヘッドライトに照らされた標識の下に男の姿がありました。ホワイトウッドまで行くというので乗せます。冒頭の魔女狩りの場面でエリザベスに呼びかけられながら知らんぷりし、その癖ルシファーに祈りを捧げたジェスロー・キーン(ヴァレンタイン・ダイアル)にそっくりです。名前もジェスロー・キーンです。
『死霊の町』 1960 約15分:夜の町と墓地+霧  町は木造の家屋が並ぶ佇まいでした。やはり木造の教会もあります。
別の家の前には人が立っていました。ジェスローはホワイトウッドでは時間が止まっているといいます。
『死霊の町』 1960 約16分:夜の墓地と町+霧 目的地のホテルの右手には墓地があります。
200年以上使われていないとのことです。
 車を停め、荷物を後ろから引っ張りだして振りかえると、助手席には誰の姿もありません。
 レイヴン・ホテルに入ると、暗い中、光が水面の反射のようにゆらゆら揺れています。入ったすぐ先には階段があり、やや左上がりで10段ほど、踊り場となって左に折れています。 『死霊の町』 1960 約17分:ホテルの玄関ロビーと階段
少し進むと奥に暖炉があり、右の方に受付のカウンターがある。壁に「1692年3月3日、魔術の廉でエリザベス・セルウィンこの地にて火刑に処される」というパネルがかかっていました。
 背後から肩に手をかけられます。しかし娘は口がきけないようです。階段からニュウレスがおりてくる。最初は顔が陰に隠れています。光の下に来ると冒頭の場面のエリザベスとそっくりです。なおパネルにあったセルウィンの綴りは
Selwyn で、ニュウレスがその逆転だろうとは察しがつきます(エンド・クレジットでは Newless )。『夜の悪魔』(1943)におけるドラキュラ/アルカードに代表される伝統にならっているわけです。
 ニュウレスは満室だといいますが、ドリスコルの名を出すとロビーの裏の部屋に案内します。受付の向かい側です。床の絨毯の下に揚げ蓋がありました。
 ニュウレスとジェスローが暖炉の前で不穏な話をしています。暖炉の内側からのショットです。

 ナンは通りに出ます。地面は霧に覆われている。向こうの方で通りかかった町の二人が立ち止まり、そのままナンの方を見ている。
 教会です。木造、全体でゆるやかな角からなる7角形の正面です。手前で住民の一人とすれ違う。この人も少し奥まで行くと立ち止まり、ナンをじっと見ます。教会の入口に牧師が現われ、この町は過去300年間邪悪に支配されてきた、すぐに町を出ろといって背後の暗がりに後ずさりで消えます。
 また女性二人とすれ違う。彼女たちも立ち止まり、ナンを見続ける。
『死霊の町』 1960 約24分:霧の街路+停止した町民たち 前の3人もそのままの位置に留まっています。動くわけでもないのがかえって、なかなか不気味です。
『死霊の町』 1960 約24分:町の一角+霧 なお町の一角で、建物の凹んだ角に木だか石だかがなだれ落ちたかのようになっている部分が見えました。あれは何なのでしょうか?
 ナンは教会の左にある「教区会館 骨董と古本 The Parish House. Antiques and Old Books」と看板の出た店に入る。若い娘がいて、祖母が亡くなったので整理に来たという。ふだんは別のところに住んでいるようで、つまり町民ではないわけです。牧師は祖父とのことです。火刑の様を描いた油絵もあります。ナンは彼女から『アメリカ北東の悪魔崇拝について A Treatise on Devil Worship in New England 』なる本を借ります。

 ホテルのベッドで本を読んでいると、揚げ蓋の下から音がする。ニュウレスに告げると、地下室は埋められたとのことです。
 11時36分、ロビーで人々が踊っています。皆顔はよく見えません。
 借りた本によると、1692年2月1日、聖燭節前夜
Candlemas Eve に13人の魔女(男性含む)がレイヴン・ホテルの地下で黒ミサを執りおこない、13の時に若い女を生贄に捧げたとのことです。
 ロビーには太い木の梁が水平に走っています。ニュウレスに踊りに参加しないかと誘われたナンはいったん覗いて部屋に戻り、着替えてからドアを開けます。そのとたんにそれまで鳴っていた音楽が途切れる。ロビーには誰もいません。ニュウレスは皆集会に行ったという。今日は2月1日です。
 部屋に戻ると、矢を刺された鳥を見つけます。ロビーに出ますがニュウレスもいません。11時45分です。部屋に戻ろうとすると、扉の上にニンドウの枝がかけてあります。
 揚げ蓋をあげようとします。窓に何かが当たる音がする。
『死霊の町』 1960 約35分:霧の墓地、窓越しに 窓の外を見ると、霧の墓場で、フードをつけた人々が左に進んでいます。合唱が流れます。
 窓に当たったのは吊り下げられた鍵でした。試してみれば揚げ蓋の鍵です。
あけると下へ階段がおりています。蜘蛛の巣だらけです。 『死霊の町』 1960 約35分:揚げ蓋の下、地下への階段 上から
 階段をおりると、両側から男たちに捕まります。先に鎖付きの岩の柱があります。廊下を奥に連れられる。このあたりの壁は洞窟状です。落とし戸が落ちます。さらに奥へ進む。この場面では地下通路はささっと通り過ぎてしまいますが、後にもう少しゆっくり映されることでしょう。
 切り替わって低い梁の出口から出てきます。先に祭壇がある。そこに寝かされます。ニュウレスが「私はエリザベス・セルウィン」だといいます。すぐ右背後にドリスコルの顔が見えます。13の鐘が鳴る。ここまでで約37分でした。


 舞台はナンと兄ディックの従姉妹スージーの誕生日会に移ります。そこへビルがやってきて、ナンから2週間連絡がないといって、ディックに確認を求めます。ディックはレイヴン・ホテルに電話しようとしますが、そんな電話番号はないとのことです。
 一方レイヴン・ホテルではニュウレスが牧師の孫娘に本を返しています。孫娘が出ようとした時、ロッティが何か手渡す。ホテルを出ると刑事に質問されます。ナンが行方不明だという。
 バーロウ邸です。なぜかそこにいたビルが電話に出ると、ナンはレイヴン・ホテルを2週間前にチェックアウトしたという。
 ドリスコルがマントを着て、鳥を生贄に捧げます。そこにチャイムが鳴る。ディックが訪ねてきます。ドリスコルの自宅ということのようです。以前講義していたのもここでした。書斎にはトーテム・ポールだのアフリカあたりの彫像だのが飾ってあります。
 ディックと入れ替わりに今度は牧師の孫娘がやって来ます。牧師ともども姓がラッセルだとわかりますが、ファースト・ネイムはまだ不明のままです。
 孫娘はドリスコルに教えてもらってバーロウ邸を訪問します。ロッティに渡された届け物があるのでした。


 約50分、霧に覆われた夜の道で孫娘が車を走らせています。途中で男を乗せる。ホワイトウッドの住民だと聞いて会ったことがないと答えると、私に会えるのは特別なことなのだ、君は選ばれたといわれます。店の前で車を停め、振りかえると男の姿はない。
 暖炉の前でニュウレスとジェスローが不穏な話をしています。12時です。明日は魔女の安息日だという。


 ディックとビルが別々に車で出発します。それを窓からドリスコルが見ている。
 霧のガソリン・スタンドです。ディックが道を尋ねる。進むと今度は標識の下には誰もいません。このあたりの音楽はジャズでした。
 今度はビルがガソリン・スタンドで道を尋ねます。こちらも進むとバック・ミラーに火が映り、次いで火刑にされながら高笑いする魔女の姿となります。車は転倒し、命からがら這いだすのでした。


 ディックが町に着き、レイヴン・ホテルでナンが泊まったのと同じ部屋に入れてもらいます。
『死霊の町』 1960 約58分:霧の街路+停止した町民たち  通りに出る。やはり霧が這っています。背後で二人、すれ違った一人、またすれ違った女性二人、いずれも向こうで立ち止まり、ディックのことをじっと見続ける。ナンとの時とまったく同じパターンなのが不気味さを増します。
 孫娘の店に入ります。ナンが借りたという本を見せてもらう。

 階段の上からニュウレスとジェスローがおりてくる。ディックに貸した部屋の扉が半開きなのを見てのぞきこむと、ロッティが何かメモしていました。ジェスローがロッティの首を絞めます。

 店でディックが本を読みながら待っていると、孫娘が牧師を連れて戻ってきます。牧師は視力を奪われたのだという。牧師が右に、ディックが左で少しだけ奥、双方アップです。牧師は左前方に目をやっています。
 約1時間2分、少なくとも日本語字幕では、孫娘の名がパトリシアだとようやくわかります。
 ディックが退出した後、引出に矢の刺さった小鳥を見つけます。扉の外にはニンドウの枝がかけられていました。
 車に向かいますがエンジンがかかりません。店に戻り電話をかける。レイヴン・ホテルでディックが受けますが、悲鳴で途切れてしまう。
 店へ駆けつけます。戸棚の中に牧師がいました。「十字架だ、十字架の影を使え」といいます。
 店を出ると傷だらけのビルを見つけます。彼をお姫様だっこして霧の街路を進む。カメラは斜めになっています。自分の車に入れると、また悲鳴です。


 柵越しにフードの一団が納骨堂に入っていくのが見えます。駆けつけますが扉は開かない。なぜかすぐ向かいの墓標を拭うと、「アラン・ドリスコルここに眠る」とありました。
 ホテルへ駆け戻ります。電話は通じません。部屋に入り、なぜか揚げ蓋を開けます。階段の下に鎖付きの石柱が見えます。
 おります。背後右に上への階段、左は粗石壁です。 『死霊の町』 1960 約1時間8分:揚げ蓋の下、地下への階段
手前上にアーチがかぶさっている。左では上から鎖が垂らされています。
 カメラの前を横切り左奥へ背を向けて進む。低い水平の梁がかぶさり、右では鎖が垂れています。
ぐるりとこちらを向いた隙に、向こうで落とし戸が上がります。振り返って中に入っていく。向こうに何やら大きな鐘のようにも見えるものがあります。左手前には鎖が垂れている。 『死霊の町』 1960 約1時間8分:地下の通路、落とし戸があがったところ
 右から左へ進みます。背後右に水平の梁を2つ経て階段が見えます。落とし戸が下がります。
 左へ進む。カメラもそれを追います。壁は洞窟状です。床にメダルが落ちていたのを拾いあげる。
 さらに左へ、切り替わって右奥から手前に出てくる。ロッティの死体を見つけます。
 右から左へ、扉があります。その先に祭壇がありました。上にパトリシアが寝かされている。陰からドリスコルが出てきます。ディックは拳銃を撃ちますが、いっかな効きません。
 しかしなぜかすんなりパトリシアを助けだし、祭壇の左奥にある階段をのぼります。揚げ蓋の下の階段よりは少し幅が広い。 『死霊の町』 1960 約1時間10分:地下の祭壇と地上への階段
階段をのぼるさまが上から見下ろされる。 『死霊の町』 1960 約1時間10分:地上への階段、上から
一味が追います。彼らが階段をのぼるさまがまた上から見下ろされる。
 あがった先は納骨堂の外でした。一味の残りが待ち受けています。
 ディックの状況は基本的にナンのそれをなぞるものですが、ナンの時はあっさり通り過ぎられた地下通路が、今回は少しばかりじっくり描かれていました。欣快のいたりであります。


 捕まって石棺の方に連れて行かれます。12時です。エリザベスのすぐ右後ろにドリスコルがいます。ビルがよろよろと近づいてきます。ディックは十字架の影をと叫ぶ。ビルが墓標の十字架を引き抜こうとします。エリザベスは手にしていた短剣を投げつけビルの背に命中させる。鐘が鳴りだします。
『死霊の町』 1960 約1時間12分:霧の墓地と十字架群  十字架に取りついたまま崩れ落ちたビルが何とか起きあがるさまが引きでとらえられます。その左右にも低い十字架がある。ビルも含めていずれもシルエットと化しています。右にもやはりシルエット化した高い十字架らしきものが見えますが、これは手前にあるのでしょうか、下辺沿いの暗がりにつながっている。ルプソワールというわけです。下辺の暗がりの上とビルのいるところとの間の地面では、霧が光を浴びて溜まっています。画面の奥は霧にまぎれた木造の建物が塞いでいる。なかなか印象的な明暗と構図です。
 ビルがついに十字架を引き抜きます。知らないはずの牧師の台詞、生ける神の裁きを受けよ云々と叫ぶ。手前から背を向けてビルの方に進んでいた一味の一人が炎上します。いずれもシルエットのままです。
 斜めになった十字架だけがアップになって近づいてきます。エリザベスはパトリシアを屠ろうとしますが、ドリスコルが「待て、13の時を待たねば」と制止する。
 一味の者は次々と炎上します。この間ビルはシルエットのままで、顔が見えない。ついに一味を滅ぼし、十字架を手放して倒れると、顔が見えるようになります。何らかの力が取り憑いていたということなのでしょうか。
 解放されたパトリシアとディックはホテルに向かいます。カウンターの奥にフードをかむったニュウレスがうつむいて坐っています。こちらを向かせると、火刑にあった時の状態でした。


 先に触れた『サイコ』との共通点の内もっとも大きいものが、それまで主人公としてその視点に寄り添ってきた人物が、なかばにして殺されてしまうということでしょう。本作を見た際には短剣は振りおろされるものの、刺さったところは映されないので、実は生きていたとかになるのかとも思ったのですが、そうはなりませんでした。もっとも『吸血鬼ドラキュラ』(1958)のところでも述べたように、そこでも主人公かと思われた人物が途中で退場するという筋運びを見ることができました。その点で本作や『サイコ』だけの特徴とも言い切れず、そもそもが本来ならプロローグにあたる部分が普通より引き伸ばされていると見なすこともできます。ただし普通より引き伸ばされることによって、見る者に与える効果がまったく別物になる点はおさえておかねばなりますまい。また『吸血鬼ドラキュラ』での第1部の主人公が男性なのに対し、本作と『サイコ』では女性なのも、非対称な印象を与えることになるのでしょう。
 他方、ホワイトウッドでは屋内が映されるのがホテルのロビーとナンおよびディックが泊まる部屋、骨董古書店の店内の3箇所だけというのは予算等の事情によるのでしょうが、隠し地下通路に加えて、ニュウレス登場時の階段をおりてくる場面、ナンが揚げ蓋の下におりていく階段を見下ろすショット、シルエットと化したビルが十字架を引き抜く際の明暗配分など、印象的なイメージにも事欠きません。わけてもほぼ同じ態で反復される、通りの向こうで立ち止まったままナンないしディックを見続ける三組計五人の町民のシークエンスは、本作でもっとも刻印力の強いイメージではなかったでしょうか。これあるをもって、本作を記憶に留めておくことといたしましょう

 
Cf.,

Jonathan Rigby, English Gothic. A Century of Horror Cinema, 2002, pp.68-70

The Christopher Lee Filmography, 2004, pp.95-97
 2015/8/24 以後、随時修正・追補
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